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2018.08.18

CASIO EXILIM ZR200


デジタルカメラを持ち歩く人はずいぶん減った。スマホのカメラが良くなって、わざわざデジカメを使う必要がなくなったからだろう。このコンパクトカメラを作っていたCASIOもついにデジカメ市場から撤退を余儀なくされた。

コンパクトデジカメは意外と難しい製品だ。一般人が日常的に使うカメラだから、ユーザーの使い方は千差万別。ある意味ではプロ用の一眼レフよりも幅広い性能要件を求められる。
近接撮影がうまくできなかったり、広角側が狭すぎて部屋の中がまともに写せなかったり、暗い場所に弱すぎたり、起動に時間がかかったり、シャッターのタイムラグが大きすぎたり、やたら電池をくったりすると、日常生活での使い勝手がわるくなってイライラするはめになる。

僕がカメラをすぐ壊してしまうからってこともあるが、コンデジは機能面で不満な製品が多く、かなり頻繁に買い替えを強いられてきた。でもこのEXILIM ZR200だけは、6年の長きにわたって愛用した。

何よりも素晴らしいのはスピードだ。メインスイッチに触れれば瞬時に起動し、狙ったものにカメラを向けて当てずっぽうにシャッターさえ切れば、たいていはなんとか撮れた。
秒間最大30コマという超高速連写が可能で、この超高速シャッターを応用したHDR(ハイダイナミックレンジ)モードを使えば、夕暮れや逆光などの難しい条件下でも、つぶれず、飛ばず、細部まではっきりわかる自動合成写真が撮れた。

不満な点といえば、充電&データ通信用の接続ケーブルがヘンな謎の独自規格で、他の機器と共用できないばかりか、万一ケーブルをなくすと面倒なことになることと、起動時にちょくちょくレンズエラーが出て一時的に使えなくなることくらい。今月になって決定的なレンズエラーが発生したあとは回復せず、このZR200もついにお役御免となった。

6年間、ほぼ毎日ポーチのポケットに入れて歩き回って、僕はいったいこのカメラで何万枚の写真を撮っただろうか。ロケの現場では、貧弱な激安一眼レフと付属品レンズでは撮れない画角や状況をこのカメラが補ってくれてもいた。

もう使えない壊れたカメラだし、すでに代わりのカメラも買ってある。でもすっかり手になじんだ道具だから捨てるのが惜しい。もうちょっとだけ仕事場に飾っておこうかなんて、わりかし無意味なことを考えている。

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2018.05.12

まほうの絵本屋さん


ついうっかりブログに書き忘れていたが、2017年末に絵本『まほうの絵本屋さん』が出版された。文は小手鞠るいさん、版元は出版ワークスだ。

2年をかけて執筆した。色鉛筆のハイパーバーニッシング技法は、美しい発色と深い艶に素晴らしい特長があるが、その反面で制作に時間がかかるという難点もある。

この技法で絵本原画のようなサイズの大きい作品を描くのはなかなかハードな仕事だ。2年といえば時間がたっぷりあるように思うかもしれないが、技法の性格上、これでもまあまあギリギリの進行なので、2年間ずっと慌てふためき続けて過ごしたようなものだった。

出版後も、正月あけのNHKラジオ出演や3月の大阪原画展、ゴールデンウィークに開かれた上野ブックフェスタでのサイン会などがあり、なおも慌てふためく日々が続いたが、ようやくそれも一段落した。

ただそういうものが一段落してから、今までぜんぜんブログを書いてなかったことにやっと気がついて、いま慌ててこれを書いている。
結局のところ、なにがどうあっても、慌て続ける一生だけはずっと変わりがないのかもしれない。

※プライバシー保護のため、お客様の写真には画像処理が施されています。

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キンダーブック じゅにあ


『キンダーブックじゅにあ』に鯉のぼりの絵を描かせてもらった。たいへん名誉なことだ。

『キンダーブック』シリーズは、フレーベル館が発行する月刊保育絵本だ。90年の歴史を誇る超高名なシリーズながら、一般の書店では買えない。幼稚園や保育園でのみ配布されている。

絵を見せると、たいていの人は「幼稚園時代を思い出す」とか「懐かしい」とか喜んでくれる。でも、描いた僕には懐かしさはまったくない。幼稚園時代、キンダーブックをもらった記憶がないからだ。いちおう入園はしたものの、どーーしても幼稚園になじめず、わずか二週間で中退(幼稚園でも中退っていうの?)を言い渡され、以後2年間、自宅謹慎の身となったためである。

もう少し我慢しておとなしく幼稚園に通っていたら、キンダーブックがもらえたのに残念だ。
とはいえ、もともとおりこうに絵本を読んでいられるタイプの子供でもなく、なにより致命的に頭が悪かったから、もしもらったとしても、この歳になるまで覚えていられたかどうかは疑わしいが。

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2017.01.25

AyuX+09


2016年末、恒例の京都クリスマス展『AyuX+09』を開催した。

この京都での個展がクリスマスの恒例行事となって、早くも10年以上経つ。
それまでも毎年個展を開催してはいたものの、開催時期にこれといった決まりはなく、ギャラリーの事情や展示内容によってまちまちだった。
今ではクリスマス開催が定着して、年末が近づくと、「今年もクリスマス展をやるのか」といった問い合わせが数多く届くようになった。


僕にもどこか、クリスマスパーティ代わりにギャラリーを借りて個展を開いているような感覚がある。
会期中は、昔なじみの知人やたくさんの友達とふざけあい、ふだんはなかなか会えない関西の取引先の担当者さんと無駄話をして、ずっと遊んで過ごしている。
お客様と一緒に数日間にわたってクリスマスパーティをやってるようなものだ。


反面、このクリスマス展が恒例化したせいで、家でクリスマスを祝うチャンスはすっかりなくなった。
そのかわり、ギャラリーにツリーを飾り、イルミネーションをつけて、まあまあきらびやかなお祭りムードのクリスマスを過ごせている。

お盆だか正月だか三代前の先祖の法事だかわからないような、地味で無味乾燥なクリスマスを自宅で過ごすより、よっぽどクリスマスらしいクリスマスが過ごせているともいえそうだ。



2016年は、拠点を東京に移して以来、初めて東京展の開催を休んだ年でもあった。

そのため新作の数が揃わず、『AyuX+09』では、数年前に描いた絵を含む旧作をたくさん展示することになった。
新作展こそが本来の個展だと考えるなら、この展示は失敗なのかもしれないが、こうして一度制作の手を休め、立ち止まる時間を持ったことは、よい学びになったと思う。


とはいっても、いつまでも立ち止まってぼーっとしてるわけにはいかない。

ていうか、すでにぼーっとして丸一年ダラダラ過ごしてしまったんだし、できれば2017年は、せめてもう少しだけ遠くまで歩ける年になってほしいものだ。



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2016.09.22

たくあんコーラ


質素な食事を「一汁一菜」と呼ぶことがある。
なんとなくゴハンとみそ汁とオカズで「一汁一菜」みたいなイメージがあるが、「一菜」は、本来は香の物(漬物)のことだ。
ゴハンとみそ汁と漬物の三点セットが一食ってことだから、現代日本のぜいたくな食生活からすれば、おそろしく質素な食事だといえるだろう。

そして、もともとシンプルなこの一汁一菜を、さらに極限まで突き詰めてスーパーシンプルにし、なんとたんなる「二汁」で済ませられるようにと開発されたのが、この革命食品「たくあんコーラ」だ。

なにしろ、これまで固形だったたくあんが液状化しているので、たくあんコーラとみそ汁をすすり、ざくざくとゴハンを掻き込むだけで食事が済ませられる。
じつにすばらしいコンセプトの食品なのだが、あいにく味のほうはそれほど素晴らしくはなく、つーんと漢方薬っぽいにおいと奇妙なエグみがあって、ゴハンを一緒に食べるのは至難のワザだ。
一口二口ならまだなんとかなるが、全部飲むのはさすがにツライので、いっそコーラとみそ汁とゴハン、なんならそこに納豆も全部まぜて一品に仕上げ、目をつぶって一気に飲み込んだらなんとかなるんじゃないかとも思ったが、いったいどんだけ血迷った味になるのか想像もつかないので断念した。

しかも、じつはこのコーラ、ガチで大根エキスが投入されている。
高価なうなぎエキスだったら、コストを考えて多少は投入をためらったかもしれないが、せっかく安価な大根エキスがあるんだし、メーカーとしてもここは一発ドカンと豪華に入れちゃおうと考えたのかもしれない。

おかげでガッツリ本気のリアル大根味に仕上がっている。
でも消費者としては、何もそこまで本気でリアルに仕上げなくてよかったのに……と思わなくもない。

なぜか次々におかしなサイダー&コーラばかりを連発する暴虐のドリンクメーカー、木村飲料製。240ml入りで210円。どこかのサービスエリアで買ってきた。

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2015.11.03

めばえ12月号 「こびとのくつや」

幼児雑誌『めばえ』12月号に、グリム童話『こびとのくつや』の挿絵を描いた。

ひょんなきっかけで、ここ数年個展に通ってくれていた編集者がこのページの進行を担当してくれた。
どことなく謎めいたさまざまな靴屋の道具を描くだけでも楽しく、時間を忘れて制作に没頭できたのは、彼女が僕の絵柄と好みをよく知って企画をえらび、依頼してくれたおかげだ。

同誌には、アンパンマンや機関車トーマス、妖怪ウォッチ、シルバニアファミリーなど、幼児向けの超鉄板キラーコンテンツが、これでもかとばかりにギッシリ詰め込まれている。
さらに保護者向き副読本ですら、子供に大人気の市原淳さんのカラフルなイラストで飾られていて、まさに百花繚乱、豪華絢爛、まばゆいばかりだ。

幼児メディア業界のスターたちがひしめく贅沢な誌面の隙間に、無名の貧乏イラストレーターが必死に色鉛筆を塗りたくった5ページ構成のグリム童話がひっそりと所在なげに挟まり、それはそれで絶妙の箸休め感を醸し出している。

付録には、「レンジでチンあそび」キットもついていて、どんな幼児でも、チンチン鳴らして遊んでいるうちに、家庭用極超短波式電磁加熱調理器の基本構造と使用方法の概要をガッツリ学べるようになっている。

『めばえ』12月号は、小学館から特別価格680円で好評発売中。

ほんらいは2~4歳の幼児向けに編集された誌面だが、精神年齢さえ2~4歳なら、肉体年齢が80歳以上の読者でもまったく問題なく楽しめる。実年齢は気にせず、どんどん購入・熟読してもらいたい。

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2015.08.26

ぷっちょ 塩じゃけ

塩じゃけのソフトキャンディ。
凶暴な企画である。ほとんど正気の沙汰とは思えない。

塩じゃけのイラストとともにパッケージにあしらわれたキャラクター「ぷっちょくん」も、あきれて白目をむいている。(←いやまあ、もともとそういうキャラだけど)

皮つき塩じゃけを気取ったオレンジとグレーのデザインはギミック感満載でぷんぷんと安物臭い。
が、リアルな鮭パウダーまで突っ込んでじっくり作り込んであるから、味は意外と本格的で、見た目の安物臭さが消し飛ぶほどの圧倒的な生臭さが味わえる。

そして驚くべきことに、なぜかひじょーーーーーにうまくてバクバクいける。

ただ、うまいのは4粒目までだ。うっかり調子に乗って5粒食うと、いきなり生きる気力を奪われることもあるから、初心者は慎重にチャレンジしてほしい。

上級者なら、本物の塩じゃけと一緒に食べれば、生臭さもガツンと倍増、ぷっちょをおかずに白めしが何杯でもいける。味覚と人格が破壊されることを恐れない真の勇者には、ぜひとも試してみてもらいたい。

UHA味覚糖製、10粒入り、個展の差し入れでもらったので、価格は不明だ。

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2015.06.25

AyuX+07 京都クリスマス展

すでに半年も前の話だ。
昨年2014年末、京都で恒例のクリスマス展を開いた。

東京に拠点を移して8年になるが、ふるさとの街はいつ歩いてもさほど変わらない。

が、展覧会で会うお客様や仲間たちには、それぞれ少しずつ変化がある。
結婚した人、子供ができた人、新しい仕事に就いた人、進学した人、転職した人、引っ越した人、リタイアした人……個展開催のたび、たくさんの嬉しい話や、いくらかの残念な話を聞く。

毎年必ず会いに来てくれる人、久しぶりに会えた人、ようやく初めて会えた人……多くの人たちが、クリスマスにそれぞれの想いを小さなギャラリーに持ち寄ってくれた。

そのお礼ってわけでもないが、2013年のクリスマス展に続いてチュッパチャップスのキャンディーツリーを用意した。

忙しい年末にわざわざ時間を割いてくれた人たちには申し訳ないが、僕には誰もが喜ぶ素晴らしいクリスマスプレゼントを配る力はない。安物のアメ玉がぎりぎりの精いっぱいだ。

年末の京都展では、友達とこのくだらないアメを舐め、まずいお茶を飲んでムダ話をするのが恒例みたいになってきた。
なんだか貧乏くさくてパッとしないクリスマスだが、仲間と笑って過ごせるなら、こういうショボい聖夜だって、そんなに悪くはないものだ。

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2015.01.26

コピック・スケッチ

ふだんカラー作品の制作にはフツーの色鉛筆だけしか使わない。

でも色鉛筆だけで制作する重ね塗り技法には、鮮やかな色が出せる利点の反面、絶望的に時間がかかるという避けられない欠点もある。
だから急ぎの原稿には向かない。マティエール(絵肌)が重要な展示用の作品ではやらないが、本の挿絵とかの印刷原稿では、仕上がりを早めるためカラーマーカーを併用することがある。

マーカーはToo製の「コピック・スケッチ」を使っている。10年以上前にバカ高い72色セットを買って以来の、けっこう長いつきあいだ。

ただ、後から少しは修正できる色鉛筆に比べると、塗り損なうと後戻りがきかないコピックは格段に難しい画材だ。僕みたいなヘタクソがガッツリ塗ると悲惨な仕上がりになるから、せいぜい下塗り程度にしか使ったことがない。

それでも年月がたつと、色によってはインクが抜けてかすれたり、筆先がバラけたりして使えなくなってくる。でもめったに使わないからと、ここ数年、壊れたままほったらかしてあったが、まとまった数の急ぎの原稿のために、一部を買い直すことにした。

買い直したのは15本くらい。次にまたインクが抜けて買い直す日までに、少しはうまく塗れるようになるんだろうか。


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2015.01.17

30円

正月早々、パソコンのパーツを買い直さなくちゃならなくなって電器屋に出かけたら、はっぴ姿の店員に呼び止められ、謎の紙包みを握らされた。

「開運 御浄銭」と書いた包みには五円玉が入っていた。
能書きによると、ありがたい鎌倉銭洗い弁天(宇賀福神社)でお浄めしてもらったものだから、銭は銭でも、そこらに転がっている薄汚い世俗の五円玉とは違うんだという。

店員はいっぺんに6つも渡してくれたが、一気にまとめて押し付けられると、いくら由緒正しいものだって、かえってありがたみが薄れる。
つい「ちぇっ、ようするに神事に擬装した30円分のケチな割引かよ」と、いくらか厭世的な気分になって、家に帰るなり包み紙をむしってゴミ箱に捨て、中身の硬貨は30円分のたんなる世俗の五円玉として使うことに決めた。

もともと信心がないから、御浄銭だからって特別扱いする必要はないわけだが、せっかくの銭なので、どこか手近なレジ前の募金箱にでも放り込んで、せめて鎌倉銭洗い弁天の顔だけは立ててやろうと思っている。


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2015.01.03

2015おせち

故郷の田舎では、正月にも絵に描いたようなきれいなおせちは出てこなかった。

おせちといえば、大鉢ひとつに一品ずつ馬のエサみたいにドカーンと大量に盛り付け、食卓にずらっと並べるだけで、見た目は二の次、祝い膳というよりは、ただの保存食といった趣だった。

だから子供の頃は、重箱にチマチマと美しく盛り付けられたおせちなんて、テレビ番組専用の特殊な演出で、現実には存在しない架空の料理だと思い込んでいた。

大人になって、きれいな重箱入りおせちが各家庭に実在することを知って驚いたが、そのときにはすでに親元を離れていて、正月だからといって特別な食事をとる習慣すらなくなっていた。今も元日はたいていパンとチーズの平常どおりのメニューで朝食を済ませている。

が、今年はちょっと事情があっておせちを食った。

元旦に起きて冷蔵庫を開けたらすっかり空っぽになっていて、食い物がひとつもない。しかたなく近所のスーパーに出かけ、売れ残りのおせち風食材を買ってきた。ついでに200円で鏡餅のミニチュアまで買った。

食卓に並べてみると、これでもなかなか正月っぽい雰囲気になる。

ふだんは食わないおせち(売れ残りだけど)まで張り込んで迎えた2015年、できるだけ良い年になってもらいたいものだ。

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2014.10.31

個展『水銀時計』

東京・吉祥寺の個展『水銀時計』が無事に閉幕した。

年に一度の東京展としてすっかり定着したおかげか、吉祥寺という街の土地柄のためか、今年も多くのお客様に囲まれ、あたたかいさざめきのなかで過ごした6日間だった。

その間、お客様から何度か「表題作の水銀時計ってほんとにあるもの?」と尋ねられた。

むろん水銀時計なんてものは現実には存在しない。ただの空想の装置だ。

水銀は常温で液体の形をとる、きわめて特殊な金属だ。わざわざ水俣病の例を持ち出すまでもなく、強い毒性があることでもよく知られている。

その反面、水銀は奇妙に美しい。小さい頃は、よく体温計を割って取り出した水銀の玉を手のひらで転がし、謎めいた銀色にみとれたものだった。

僕ら人間も、自然を傷つけ、破壊しながら生きる、いわば有毒の動物だ。その反面、時として人間のありさまは他のどんな自然物よりも美しい。

水銀の奇妙な性質は、どこか人間の矛盾を思わせる。
そのせいで、なんだか心をひかれてしまうのかもしれない。

多くの古なじみのお客様と話し、多くの新しいお客様と出会った個展だった。十年一日ともいえる、毎度さほど変わり映えのしない作品展にもかかわらず、多くの人に助けられ、休まず続けられていることがうれしい。

個展は、絵描きが作品をひけらかす場ではなく、作品を通じてお客様とふれあい、心をかよわせ、人間のふしぎの奥底に触れる貴重な機会なのだろう。

たくさんのご来場ありがとうございました。
引き続きよろしくお願いいたします!

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2014.06.17

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大阪・天満橋のギャラリーThe 14th moon。ティールームを兼ねたメイン・ギャラリーと、隣接するマニフェストギャラリー、近隣のセンティニアルギャラリーの3つのギャラリーが複合的に機能するように作られている。京阪神在住のイラストレーターたちでいつもにぎわっていて、関西の商業美術界では事実上もっとも高名なギャラリーだ。

1998年に開いた初の個展以来、僕もずいぶん世話になった。ギャラリーに集まる多くの人たちの末席を汚す一人にすぎない僕でさえ、大阪特有のフランクな気風もあってか、折に触れて足を運ぶうち、たくさんの大切な友人たちと、数えきれないほどの思い出ができた。

昨年末、京都クリスマス展に足を運んでくれたギャラリーオーナーから、2014年8月に閉廊することになったと聞いて、関西出張の一日を最後の観覧にあてることにした。

幸運にも古い友人であるイラストレーター・市原 淳さんが個展を開いていたので、彼の作品に囲まれてコーヒーを飲み、ベーグルをかじって時間を過ごし、しみじみギャラリーとの別れを惜しむことができた。

The 14th moonは、入居している建物の都合で一時的に閉廊するだけだから、すぐに移転・再開する予定だそうだ。
思い出深いギャラリーが姿を消すのは残念でならないが、見かけによらずガッツな野心家のオーナーのことだから、新しい場所に移ったら、より良く、より大きく新ギャラリーを発展させてくれることだろう。これからそこに集まる人たちが、新しい思い出をたくさん作れる場所になるんだと思うと、それはそれで楽しみだ。

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2014.04.20

さよなら『ナンクロ』

世界文化社のパズル雑誌。この『ナンクロ』以外にも、同社のいくつかのパズル誌でずいぶん長くイラストを描かせてもらってきたが、残念ながら、その多くが今春休刊された。

ずっと仕事をしていた雑誌がなくなるのは寂しいものだが、この『ナンクロ』は思い出が多く、とりわけ残念だ。この雑誌を通して良い編集者と知り合い、いまでは友人として親しくつきあうようになった人たちもある。これまでの彼らの奮闘を思うと、かえすがえすも休刊が惜しまれる。

たまたま先日、入院した知人の見舞いにゆくことがあって、療養中の退屈しのぎにと、コンビニで目についた適当なパズル誌を一冊買っていった。
長らくパズル誌に挿絵を描いてはいたものの、仕事中の手すさびに解いてみるほかには、めったにパズルをやったことがなかったが、病室でちょっと遊んでみて驚いた。

その雑誌に載っていたパズルがおそろしくつまらなかったからだ。パズルのデキがひどく悪かったせいである。

装幀や判型など、どれもよく似た感じの各社のパズル誌だが、うかつにも実際に遊んでみるまで、かんじんのパズルの品質がここまで違うとは知らなかった。

世界文化社の『ナンクロ』は、(飾りにくっついてるイラストの質は、まあともかくとして)パズルそのもののデキはじつに素晴らしかった。
休刊してから気づくのも悲しい話だが、毎号あれだけのクオリティのパズルが並んでいたのは、編集諸氏の努力のたまものだったのだろう。

もし次に誰か入院する知人がいても、コンビニの棚でいちいちよくできたパズル誌を探すのは面倒だから、もう見舞いにパズル誌を持っていくこともないと思う。手ごろな見舞い品の候補がひとつ減っただけでも、『ナンクロ』休刊が惜しまれる。


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2014.01.23

AyuX+06@京都

昨年末、例年どおり京都・御幸町のギャラリーTaketwoで「AyuX+06」を開催した。京都クリスマス展AyuXシリーズの7回目にあたる。

東京に拠点を移し、新作展を都内で開くようになってからは、関西の個展はだんだん寂しくなっていくのかなと思っていたが、予想に反して会場は年々にぎやかになっている。嬉しい誤算だ。こうして毎年クリスマス展を続けていけるのも、ずっと変わらず支えてくれる多くの地元のお客様のおかげだろう。

クリスマス展といっても、これまではあまりそれらしい展示をしてこなかったが、AyuX+06では、壁面にリースを飾り、イルミネーションをつけてクリスマスらしい演出を心がけた。

その目玉は「チュッパチャプス」だ。もちろんチュッパチャプス自体はただのアメで、ぜんぜんクリスマス飾りなんかじゃないが、ただのアメでもツリー展示にすると会場が華やぐ。買い求めた135本入りツリーセットのパーツをちょっと改造して展示し、お客様に好きな味のアメをひとつずつ取ってもらうことにした。

クリスマスプレゼントとして安物のアメでもあげたらどうかという、わりとアホっぽい思いつきだったが、意外にも子供ばかりでなく、大人にも喜んでもらえたようだ。
大人はふつうアメなんて欲しがらないが、ツリーから自分で選んで取ると、なんとなく楽しい気分になれるものらしい。その場で包み紙をむいて舐めはじめた人も多かった。

ふだんどんなにマジメな人でも、チュッパチャプスをしゃぶりながら鹿爪らしい話ばかり続けるのは難しい。アメのおかげでふしぎに童心にかえれて、無邪気なバカ話もはずんだ。

それに、あれはいったん舐めはじめるとなかなか溶けない。まさか大のオトナがチュッパチャプスをくわえたまま往来を歩くわけにもゆかないが、さりとてアメにガッチリくいこんだ棒を抜き取ることはできず、もちろんゴミ箱に捨てるわけにもゆかないもんだから、アメがすっかりなくなるまでの間は帰るに帰れず、(なかば強制的に)ギャラリーでゆっくり鑑賞しててもらえるという、やや反則っぽいオマケ効果まであった。

ただ、僕が絵なんかそっちのけにして、やたらチュッパチャプスばかりすすめていたので、「かんじんの作品はどうした?」と突っ込まれることもしばしばだったが……。

新しく知り合ったお客様はもちろん、古なじみのお客様や地元の仲間たちにも会って、笑顔でクリスマスを送り、幸せに2013年の幕をおろすことができた。
2014年を同じように楽しく振り返れるよう、そして、せめてチュッパチャプスに負けない作品が描けるよう、制作に心をくだいて過ごしたいものだ。

ご来場いただいた皆さん、声援をおくってくださった皆さん、ありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いいたします!

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